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February 20, 2010

昨日、素晴らしいワークショップが行われた。
とても素晴らしい時間だったと思う。
作家・松谷さんのお人柄や人間的な魅力、生き様、そこから発せられる言葉。美術館さんの鮮やかなご対応と、それを陰で支えてくれたスタッフの力が大きかった。
皆さんに心からの感謝を申し上げたい。

その中で私は自分の力のなさをとても感じて、うちひしがれ感を抱いた。
努力不足、経験知不足、そしてなによりも自分がいかに繊細でなく雑な人間かということを思い知らされ、うちのめされた感じがした。

自分としてできる最大限の関わり方で、この二週間は取り組んできたつもりだった。
今週に入ってからは、食事をする間も惜しくて食事は1日に1食と軽いおやつを1回程度だったし、寝る時間も惜しくていつもの半分の4時間程度、それでもやっぱり、やりきれなかったわけなのだ。日中はこどもの用事もある。短い睡眠時間の中で何回も授乳で起こされる。予想はしていたけれども母乳が少なくなったようで、いつもよりも起こされる回数が多かった。体力的には結構、がんばっていたつもりだったのだ。
でもそれは単にそれだけ、物理的な時間と仕事のクオリティというのは必ずしも一致しない。その間に能力が介在しなければ、クオリティが右肩あがりにはならない。

自分はなにもできないんだ、ということをとても思い知った。
なんのために自分はやっているのだろう、とも思った。
新しいいい経験ではあった、けれどそれをよりよいものにできたはずなのに、自分にはそうできなかった。そこがとても、悔やまれるのだ。

どうも私は「企業の理論」に似た部分で動くところがある。
もともとそれが好きじゃなくて、けれども食わず嫌いで批判するのはもっと好きじゃなくて、足を突っ込んだはずなのに、どっぷりそこに浸っていたわけなのだ。皮肉なもの。
「できないといわずにできる方法を考える」という上司からの薫陶は、企業の仕事に関しては良い形を生むけれども、繊細さを要求される今のような活動にあっては、足かせにしかならないと思えた。
いくつもの声を優先するあまり自分を置き去りにして走ってきたけれども、自分がなにをやりたいか、というところはゆるめて考えてはいけないのだ。
どちらの要望もかなえるために自分を引き裂いたけれども、それは違うことだったはずなのだ。
いくつかの方法が断たれ、結論はその方法しかなかったのだけれども。
もっと根本的なところで違う形にする必要は、あったかもしれない。

いま、自分がとても情けなく思える。
「場」をつくるという面でも、42人の子供たちが場をひとつにしたときに、その場が美術館であったときに、美術館ではちいさい声で話そうと言っている私自身が声を大にして「きいて!」というのは違う。
こどもたちが、こちらが声を大きくしなくても、「聞きたい」と思う「場」を作らなくてはならないということ。
当たり前のことなのだけど、そこが十分にできていないと感じた。
「場」は生き物、とても難しいことだ。そして、それはとても興味深い。

今回に関しては、事故がなく無事にクローズすることを目標に、それは達成されたわけだけれども、ここから先はより良い形で進めていかれればと思う。


ひとつ、とても残念で重要な示唆があった。

私はその場にいられなかったのだけれども、親子チームの方で、スタッフが考えている意識と、参加者が考えている意識に、小さくてとても大きな差が見られた。
アンケートにもそれが表れていた。
中にこういう意見があった。
「親子一組で行こうとは絶対思わない、だけどこうしてみんなで誰かが騒いでもお互い様という雰囲気で美術館に来られるのはとてもいい」

違う。

そうではない。
もし私たちの活動がそうとられてしまっているのなら、それはとても悲しいことだと思う。
私たちが行っていることは、一人ではやれない悪いことをみんなでやりましょうの会では断じてない。
親子一組一組が、自分たちだけで美術館に行くための、マナーを知り、子どもと大人とが楽しむコツをつかむ、そのための会のはずなのだ。
「誰かが騒い」だら「お互い様」ではなくて「ちがうよね」と互いに気をつけ合うような、そうしたものにしたいのだ。
(もちろんこれは理想だけれども)
終了後にスタッフからもそうした声があがった。


実は意外に、こうした親の意識とは裏腹に、こどもたち同士ではこれをしている面がみられた。

以前に参加してくれた子が、新しく来た子に、マナーを教えてあげていたのだ。
一番最初に、こどもたちと彫刻を見て、受付終了を待っていたのだけれど、そのときにとてもすてきな声がたくさん上がってきていた。
「これ、くじら?」「さめみたいだよ」「なにでできているんだろう」「さわるとつめたい」「石だ!」「おもいねえ」「うごくかな」参加者の保護者のひとりが、「一緒にうごかしてみようか」と声をかけてくれ、みんなで彫刻をとりかこんで持ち上げるふりをした。「あっうごいた!」と(もちろんうごいていないけれども)聞いたときの、こども達の顔。

「きれいな石」「あっちの石は黒いのに、こっちは白いねえ」「つめたいよ」「よごれてる」

そして誰かが言いだした。
「これも、たからもの?」
そうだよ、世界にたったひとつしかない、宝物だよ。
そうしたらこどもたちが「じゃあ、さわっちゃだめだよね」と言った。
はじかれたように「ちいさな声で話すんだよね」「走っちゃだめ」と口々に言いだした。

一度来た子たちは、しっかりと覚えていてくれたのだ。

…もっとも、私がこの子たちに関わることができたのはその最初のところだけで、展示室内での様子はわからないけれど。

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Comments

どんな場も、そこに至る過程も、すべて、“一対一”の関係づくり、“一期一会”の積み重ねなのだと思います。
今は私も、いつまにか「私が一番彼らの伝えたいことを知っているのだから、私がやらないと」となってしまっていて、自分でどんどんつらくなってきていて。
でも彼らの演奏を知っている友人が「みんなで少しずつでも、広めていければいい。手伝うよ」と言ってくれてはっとしたのが昨日の夜の電話でした。
一人きりで深く考え原動力を考える時間も必要だけれど一人でできることなんて本当に限られている、だから、ゆずれないことはなにかを共有すること、それぞれができる範囲で、知っている範囲でお互いに任せ合うこと、それは、スタッフだけではなくてお客さんもそのひとり、小さい子も大人もその場を作る要素であることはみんな同じなんだね。
…なんてちょっと的外れかもしれないけれど…でもzokさんのその頑張りを見て知ってくれているスタッフさんたちがきっといるはずだから、なにが足りなかったのか、と気にしてくれている方が他にもいるはずだから、次の機会に活かせば、よいのだと思う!

おつかれさま!
(お留守番の方たちもきっとがんばったはず!)

Posted by: ゆず | February 20, 2010 at 01:16 PM

ゆずちゃんありがとう。
いま私は電車の中。木彫家の広野さんが新宿伊勢丹に来ていると昨日ご連絡が届き、こどもたち2人を連れて向かっています。今回は動物がテーマの展示なのだそうで、留守番のさあやと大人の打合せに付き合わせたはるへの「ご褒美」にワクワク向かっています。
最大限頑張ったのはこれに関わってくれた全員でもちろん私だけじゃない。その頑張りも気遣いもきっと、参加者の皆さんには届いたと思っています。
私の大変さは、今ちいさな子どもを抱えているからで、これを過ぎればすこし変わってくるものなの、一過性です(と信じているけれど)。

もっとひとつひとつを丁寧に、私たちの活動をご海容くださっている美術館さんに失礼とご迷惑のないように、がんばりたいとせつに思いました。
これからの方向性、いろいろな道があるけれども、コアで活動する私たちの「やりたいこと」の共通認識はやっぱり同じようだと確認もできたので、きっとね。次はもっと進化させて、やっていけると思っています。
前にも書いたけれど、スタッフの方々が本当に素敵で素晴らしい方々ばかりなのです。

がんばります~!

Posted by: zok | February 20, 2010 at 02:44 PM

>私たちの活動をご海容くださっている美術館さんに失礼とご迷惑のないように、がんばりたいとせつに思いました。

そんな風に思っていらっしゃるzokさんだからこそ、美術館さんも任せてくださっているのではと思います。ボランティアさんの関係というのは、本当に些細なことで行き違ったり、フォローしきれなくなったり、、、、という不安要素のほうがどうしても多く頭をよぎってしまって、なかなか館スタッフの少ない私たちのところでは、踏み出せない大きな壁です。でも、どこの館にも先駆けた活動をと歩み始めたzokさんたちのNPOが、館にとってもよい循環を生み出す、館の一部になっていくと…よいですね。きっとなっていくだろうと思います。

広野さん、もうずーっとお会いしていないなぁ。親子水入らずでのおでかけ、きっと楽しまれたことでしょう!

Posted by: | February 21, 2010 at 06:42 PM

zokさん、ごめんなさい、上のコメント、私でした!

Posted by: ゆず | February 21, 2010 at 09:55 PM

ゆずちゃんありがとう。
そうなっていけるよう、前向きに精進しなくては!

広野さん、作品が一段と素敵になっていました~。気さくなお人柄に、短時間でこどもたちがすっかりなついていました。人見知りの激しいさあやまで!びっくりでしたよ~。

Posted by: zok | February 21, 2010 at 10:24 PM

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