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June 11, 2007

河元?

ホテルのチェックインでは、四川先生と私それぞれがサインを求められた。
そこで驚いたのが、「河元」という文字。
私の名が、この正体不明の、居酒屋の名前のように変わっていたのだ!

居酒屋・河元。
背の高いビル立ち並ぶ都会の端っこ、駅から続く商店街の終わりあたりに、左右の雑居ビルに挟まれて、紺色に白抜きした「河元」の文字がはためく。
夕暮れともなれば、仕事帰りのお父さん達が立ち寄って、仕事と家庭の気分の隙間を埋める、安息所となる。
暖簾をくぐると、カウンターと小上がりがあるばかりの、こぢんまりした店である。
馴染みの客に言わせれば、その小ささが良いらしい。
どの席からでも店の中、いや、店中の壁が見渡せる。
壁という壁に下がった女将さん手書きの短冊が、河元のメニューの全てだ。
初めて来た客でもずっと前からの馴染みのように、壁を見て肴を選べる。
店の小ささはつまり、いつ来てもくつろげる、独特のスイッチのようなものだった。
仕事でささくれた神経を、ここでゆっくりと酒の力を借りながら、あるべき姿に戻していく。
その意味で、河元は馴染み客たちには欠かせない、現実と現実の狭間にある楽園なのだ。
丸みを帯びた体に紺色の作務衣を纏い、ねじり鉢巻して包丁を握る大将。
仕事に厳しく、緊張感をみなぎらせて魚をさばく姿はちょっとおっかないが、馴染みの客に進められる杯に目尻が垂れると戎さまのようになる。
ちょっと汗っかきで、満席になる八時頃には、鉢巻が汗を吸い込んでぐっと重くなる。
頃合を見計らって、女将さんが洗い立ての豆絞りの手拭いを渡すと、大将はぎゅっと鉢巻を締めなおして、魚に向き直る。
自分のことはあまり話さないが、一流の店に居たこともあったらしい。
女将さんが毎日手拭いばかり何本も洗濯するんですよ、と場の雰囲気を和ませると、小さな店に温かな笑いが渦を巻く。
賑やかすぎず、静か過ぎず、小さい店に満ちる心地よさに吸い寄せられて、今日もまた夕暮れが恋しくなる、そんな店なのだ。

…とまあ、妄想はそれくらいにして。
なぜ「河元」なのか(大きな衝撃を伴いながら)考えてみた。
ひらがなの音に当てはまるのかと思い、四川先生に聞いてみると、そういうわけでもないらしい。
首をひねっていると、四川先生が突然に「これだ!!」と言い出した。
ひらがなで名前を書いてみる。
その下に「河元」と書いてみる。
そうすると「さんずい」「可」「元」のみっつに分かれた文字のパートが、それぞれひらがなで書いたときの名前の見え方に似ている!というのだ。
…なんて、テキトーな…(笑)

かくして私は、ホテルを「河元」としてチェックインし、「河元」としてチェックアウトしなければならない。
その文字を見るたびに、どうしても夕暮れが恋しいような心持になる、私なのであった。

ちなみに、名前関連だともうひとつ面白いことがあった。
海外旅行に良く行く方ならご存知だろうが、飛行機への預け荷物につけられるタグが、面白い。
はるの荷物につけられた名前は、苗字の下が「HAMSTR」となっている。
「ハムスター?」素っ頓狂な声を上げると、四川先生が「ああ、それ、下はイニシャルにミスターとかミズをつけるんだよ」と言う。
他のものを見てみると、四川先生は「KEMR」、私のは「KOMS」とあった。
以来、はるを「ハムスター」、四川先生を「ケムル」、私を「コムス」と呼ぶのが、ちょっとだけ流行中である。

固有のものと思っていた名前がこうまで変わってくると、旅行の醍醐味にまた別の味わいが出てきて楽しい。

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