« 読書の効用 | Main | 手にパレード »

April 16, 2007

パンのおもさ

一時期私のまわりでブームになった、京都のデニッシュ生地の食パン屋さんを、たまたま見つけた。
このパンを私に教えてくれたのは高校の同級生だったように記憶しているから、出会いは結構前になると思う。

新橋駅の地下で見かけたら、なんだか郷愁をそそられて、買い求める人の列に、ひょいと並んでしまった。珍しくはるも大人しく従って、パンのケースを眺めていた。

こちらに年月が流れた分、パン屋さんにも年月は流れているわけで、種類が増えていた。以前は「プレーン」と「チョコ」の二種類ばかりだったのが、五種類くらいになっている。
さて困った。
私は新しい味の「シナモン」が食べてみたいが、はると旦那さんの好みは、王道「プレーン」だろう。
しかし、このパン屋さんの一斤は、スーパーにある食パンの倍の大きさ。
それが二斤と、はると、美術展の図録(これまた重い)――けっこうな荷物の嵩に、考えただけで目眩がしたが、こういう状況下で好奇心と食欲には、なかなか抗えない。普段良く利用する駅ならまだしも、用事がなければ滅多に通らない駅だ。

結局悩みぬいて、二斤にした。
ご存知だろうか。
ふわふわのパンも、量があると、かなり重いのだ。
記憶の中で多少誇張があるかもしれないが、広辞苑くらいの重さはあったと思う。
バターもたっぷりのリッチなパンのせいなのか、ずっしりと重い。
その重さに気付いたのは、会計後、袋を渡されてからなのだから、泣けた。
いまさら返すわけにもいくまい。

やがてはるは疲れて歩かなくなり、パン二斤と12kgの子どもと肩に食い込むほどの鞄を抱えて、私はしばし途方に暮れた。
自分の好奇心が恨めしかった。
一斤にしておけば良かった。
「かちかち山」で、欲張り狸の乗った泥舟がズブズブ沈んでいくところを何故か思い出して、非常に憂鬱な気分だった。

なんとか家に辿り着いた頃には、腕は抜ける寸前だった。
とても充実した達成感があった。
あとはこのパンを、旦那さんとはるに食べてもらって、「おいしい」の一言が聞ければそれで報われる。

しかし天は、欲張り狸に厳しかった。
旦那さんは「ふーん」の一言。はるに至っては、口に入れようともしない。

ひとりでひっそりパンを食べるとき、その重さが必要以上にずっしりと感じられるのだった。
教訓。
欲を出して無理しても、あんまり報われないものだ。

|

« 読書の効用 | Main | 手にパレード »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« 読書の効用 | Main | 手にパレード »