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April 08, 2007

四川先生、電車に運ばれる。

四川先生(旦那さん)は近頃、浮かれ模様である。
忙しくて半ばハイなのかもしれない。
あるいは、集中して行われている飲み会のせいなのかもしれない。
歓送迎会シーズン+お花見シーズンのこの頃、四川先生は久しぶりに飲み会の予定が目白押しである。

もともと彼はお酒が好きなのだけれど、どうも一年を通して忙しく、家と職場の往復生活が多い。
ごくたまに、月にいっぺんくらい、気の合う友人や職場のひとと飲みにいく程度。
以前ボーナスを丸ごと飲んでしまった頃に比べたら、いたく質素な日々を送っている。
家庭を持つとは、大変なことである。合掌。
そんなわけでたまに、楽しい酔い時を過ごしてくるようである。

その四川先生からある晩「いやー、まいったよ。」と電話があった。
教え子の卒業祝いだったかなにかで、嬉しさ余って飲みすぎたらしい。
家のある駅を通り越して、みっつ先の駅まで行ってしまったのだ。
たかが三駅と侮るなかれ。
このあたりは電車の始発·終点地帯なのだ、しかも、夜中であるし。

しかし、話の続きを聞いて、更に驚いた。
この駅についたのは二度目であるという。
二度目というのは、過去に来たことがあるという意味ではなく、「つい一時間ほど前にもここについた」というのだ。
つまり旦那さん、一旦この駅に着いて、まずいと気づいて乗った反対側の電車でまた乗り過ごして振り出しに戻り、さらに通り越してまたここについている。
「永遠にうちに帰れないかもしれない」などとのたまうのだが、そこはやはり楽しい酒のあと、深刻さも少ない。
家で聞いているこちらは気が気ではない。
そろそろ電車も終る時間なのである。
そこからタクシーで帰ってくるよりは、近場のビジネスホテルを探してもらった方が断然コストパフォーマンスがいい。
今度電話がかかってきたら、そう言おうと思っていると、無事最寄駅に着いたと連絡があった。
酔いはまだ全然醒めていないらしく、呂律がちょっと妖しい。
それでもその回らぬ舌で「どうしても僕は、ミスタードーナツが食べたいのれす!」と力説し、ドーナツを買ったらタクシーで帰る、という。

私はほっとしながら、帰りを待っていた。
ところが、車で5分強の最寄り駅から、一向に帰ってこない。
ドーナツ屋で迷っていることを勘定に入れても、50分はいくらなんでも長すぎる。
まさかなにかあったのか――と心配しているところに、玄関のドアノブががちゃりと音を立てた。

にんにく臭い息をはーっと吹きかけて、千鳥足でソファに倒れこむ。
「ドーナツが1種類しかなかったので、ラーメンを食べてきました。」
ドーナツのかわりに、ラーメン。
酔った人の考えることというのは、実に不可思議である。
音引きが入っていることと、材料が小麦であることくらいしか、類似点はないではないか。
しかしおそらく四川先生の頭の中には、なにかそこに共通するものが見出せたのだろう。
彼はしきりににんにく臭い息を私めがけて吹きかけながら、
「いれ放題のおろしにんにくが、からしにんにくに変わっていて、癪に障ったので大量に食べてやった。どうだ。」と得意げだ。
どうと言われても。
どう答えたら良いのだろう。

まあとにかく、楽しい酒だったのなら、良かった。
年に何回あるかわからない、いいお酒だったのでしょうしね。
(なんて今だから言いますが、そのときは「その息やめてよ!!」ときゃあきゃあ家中を逃げ回り、酔っ払いは浮かれ調子で更に追いまわし、酔いがまわりきって布団に倒れこみ、ようやく収拾したのです。)

電車に揺られてごとごとと、
おそらくはみんなの顔でも思い浮かべながら夢枕、
横浜―逗子間を往復していた旦那さんを考えると、
ちょっとほほえましいような、春の宵なのでした。

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