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March 21, 2007

音楽と窓の外。

近頃、ひとりで外出することが多い。
たまに訪れるひとりの良さは数あれど、その中でも格別なのが、「景色に音をつける」こと。
つまりは、ポータブルプレーヤーで音楽を聴きながら、電車の窓外を見つめることなのだけど。
これがとても気持ちいい。

携帯に好きな音楽をいれて持ち歩いているのだが、家で音楽を聴いているときと違って、風景が流れていくことに格別の興趣がある。
音も、旋律も、リズムも、風景も、全部、流れていく。
心地よいのだ。

そうやって全部流れて、どこか後方に飛び去っていくと感じるとき。
もしかすると自分の一部も、一緒に飛び去っているのかもしれない。
それは日ごろの憂さであったり、なにか気がかりなことであったり、そういうもの。
音楽で心が洗い出されて、洗った後のいらない気持ちは後方に飛び去っていって、なにか自分が少しだけ新しくなったような、そんな感じがするからかもしれない。

転職で上京したとき、新幹線の中で同じようなことを考えた。
いつもは二枚あった切符が、その日は一枚きり。
物理的には半分の重さしかないその片道切符が、往復切符の何倍も重かった。
この一枚によって、私はこの土地から切り離されるのだ。
景色とともにそれまでの全てが、後方に飛び去っていく気がした。
妙に気持ちが浮ついていたのを覚えている。それは、体の奥底にズンと沈み込んだ片道切符の重さと、無意識にバランスをとろうとしてのことだったかもしれない。

当時とまるで変わったのが、やはり携帯をとりまく技術であろう。
あの時は携帯、ポータブルMD、そのほかいろんなもので、ポケットが膨らんでいた。
今は、携帯ただひとつ、である。
便利になった。

酔うように、携帯で音楽を聴きながら、窓外を見つめている怪しげなご婦人がいたら、それは私かもしれない。
焦点の合わない目をなるべく見られないように、ひっそりと車両の端に腰をかけている。
見かけても、なるべく声をかけないでください。
うつろな姿を見られた人間も、見てしまった人間も、どことなくばつが悪いものですから。
電車を降りたら、ゆっくりとお話しましょう。

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