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January 31, 2007

立腹帖。

近頃、非常にイライラする。
毎日毎日、イライラの種がどこかしらに落ちている。
そういうわけで良くぷりぷり怒っている。

当然のことながら、怒っていると、精神衛生上はもちろん、家中空気がよろしくない。子どもも吠え出す。
私は激昂すると尋常でない力が出るらしく、先日非常に理不尽な態度をとられた時は(たいていこういうのは身内が原因)、思わず近くにあったファンヒーターを蹴ってへこませてしまい、旦那さんに暴行がバレて叱られた。
家の中での暴力、という意味においては、私は立派なDV加害者だ(家電製品に対して)。

さて、なんでこんなにイライラするのかというと、あまりその理由が思い当たらない。
カルシウムが不足するとイライラするらしいと聞くのだが、くだんのエスプレッソマシンで毎日カフェオレをたらふく飲んでいるので、牛乳由来のカルシウムはふんだんに摂取しているはずである。
砂糖をとりすぎるとカルシウムを溶かしてカルシウム不足になるのでイライラするらしいとも聞くのだが、朝にチョコレートを、午後に飴を食べる程度しか砂糖はとっていないはずなので、これも状況にそぐわない。
原因不明となると、対処療法的にイライラを解消する方法が必要となってくるのである。

考えた。
して、はたと思いついたのが、内田百閒先生の著書『立腹帖』。
そうだ、その手がある。
腹が立ったたびに、書き留めていったらどうであろう。
言葉に置き換えたら、多少は気持ちも落ち着くのではないか。
しかし、そうなると、ただ書き連ねただけでは面白くない。
他の誰が読むわけではないにしろ、せっかくならこれを修行として捉えて、前向きに転換してみたらどうか。
それにはまず、文章作法から――。
そんなわけで『立腹帖』を買いに、まだ吠え続ける子供を伴って、いそいそと書店に向かった。

書店は、我が家ではその別名を『魔境』という。
求める本以外にも必ず「買え」と洗脳してくる本が何冊もあるし、その呪縛からは逃れるのが難しく、たいていその要求に従わざるを得ない、大変恐ろしいところだ。

私は求める『立腹帖』があるはずの棚を目前に、やはり呪縛に絡めとられた。
別の出版社が出している百閒先生の別の著書が、らんらんと光る目で私を見つめていた。
こういう場合は大変危険である。
危険であると知りつつも、愚かなるかな、私はその1ページをめくってしまったのである。
他の本ならいざ知らず、百閒先生の1ページは、私を呪縛でぐるぐる巻きにするぐらい、赤子の手をひねるようなものである。
ページが進むごとに私は立腹帖のことなどすっかり忘れて、ときにくすくすと笑いを漏らしながら、レジに向かう。
私に笑みを確認したせいか、吠えていた子どももまた笑みを浮かべて、音の出る電車の絵本を手にレジについてきた。
家につくと、私は暖かいカフェオレを、子どもはホットミルクをそれぞれ手に、読書する。

そうやって幾日か過ぎて、そういえば『立腹帖』、今回も買わなかったなぁと思い出す。
当然のことながら自分で書くにも至らない。
その前の前の段階くらいで永遠に、堂々巡りしているのである。
いつか書ける日が来るのであろうか、立腹帖。

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