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November 17, 2006

いま、むかし。

061020_14320001鶴岡八幡宮、源平池には、白鷺がいる。
鴨や鳩に混じって鷺が魚をとっていた。

曇り空の、寒くも暑くもないのどかな午後で、石造りのベンチの隣には、おばあさん達が座っていた。
はるはベビーカーのまま寝てしまい、私はペットボトルのお茶を飲みながら、ぼんやり鳥たちを見ていた。

鳩の群れは、餌をくれる人めがけて集団を作っている。
鳩もいろいろだ。
妙に肥えて毛艶のいいのもいれば、痩せこけてみすぼらしいのもいる。
隣の二人連れのおばあさんがはるを見て、「良く寝ているね」と声をかけてくる。
2、3言葉を交わして、おばあさん達も私も、まただんまりと鳥を見る。

鷺は、すごい速さで水面にくちばしを突き立て、泳いでいる魚を捕らえて飲み込んでいた。
みすぼらしい鳩が、餌を見つけてつついた。
横から肥えた鳩が来て、餌ではなく、痩せこけた鳩をつついた。
痩せこけた鳩はよろよろとその場を立ち去るしかなかった。
鷺はゆうゆうと、また一匹魚を捕らえていた。

「いじめは、どこでもあるよねぇ」とおばあさんが言った。
「動物の世界でもあるんだから、人間にあるのなんか、当たり前かもしれないよねぇ」ともう一人が応酬した。
「いま、いじめいじめって言ってるけど、昔からあったよね」
「そうね、急に出てきたわけじゃないもんね」
「いま騒ぐのは、みんな弱いからだと思うよ」
私自身、酷いいじめに苦しんだ時期があるので、胸をぎゅっと掴まれたような気持ちで、聞いていた。
おばあさんは、別に私に話しているわけではないのだけれど。
「昔は、いじめられても、知らん振りしてれば良かった。それに、間違ったこという奴に『違う』って言う人らもいたし、かばってやる人たちもあった。でも今は、みんな弱くなってるから、かばったり、意見したりすることができないんだよねぇ」
「それじゃ、いじめられる人は、一人っきりだから、余計に辛くなるもんねぇ」
「かわいそうだね」
「かわいそうだね」
一人がぽつりと言った。
「でもきっと、なくなんないよ、いじめは。」
もう一人も言う。
「昔からあるしね。動物の世界にも、あるもんね。」

鷺は、数匹魚を捕らえて、中州に飛んでいった。
腹がくちくなったのか、木陰にうずくまった。昼寝するのかもしれない。
鷺の羽ばたきに驚いて、鳩がいっせいに飛び立った。

羽ばたきの音に驚いて、はるが眼をさました。
きょとんとして、鳩を、池を、見ていた。

「ぼうや、いくつ?」とおばあさんが聞く。
「二歳ちょっとです」と私が答える。
「そう、色の白い、かわいい顔してるねぇ。足がおっきい。丈夫な子になるよ。ぼうや、強くおなり」
おばあさん達は、「お先に」と言って、去っていった。

私はおばあさん達が言ってたことを思い返していた。
私がいじめにあっていた時も、かばってくれたり、意見する人は、一緒にいじめられるようになって、長いものに巻かれていったっけなぁ。一人で、辛かったなぁ。そうか、あれは、私も含めて、みんな弱かったからなんだ。
江戸時代の資料にも、いじめの話は出てくる。
こどもじゃなくて大人の、もっともネチネチしたいじめの話だ。下級武士同士がある任の折、新任者に「土産の羊羹がいつもの○○屋のと違って不味かった」とネチネチ。鬱憤晴らしをこういうところでするそうな。
子どもの世界に限らず、昔に限らず、今も、大人の世界にも、こういったいじめはたくさんあるだろう。
私も、いじめは、なくならないと思う。
どう対処するか、なのだと思う。
本人も辛いけれど、親はもっと辛いだろうとも思う。
立ち向かえとよく言われるが、私は逃げたもん勝ちだと思う。
逃げられる環境にあるなら、逃げ出すが勝ち。追ってくることは、まずない。
自分を取り巻く世界が辛い環境なら、自分の保身のために、逃げ出して別な世界に飛び込むしかない。
それは決して世界を閉じるという意味ではなく、むしろ世界を広げる行為だと、私は思う。
個人だけで解決できることじゃない。
自分もまわりも弱いなら、弱いなりに保身する方策を編み出す、それもひとつの手段だ。
ひとは、一朝一夕に強くなれるわけではないから。

いまとむかし。
こどもを取り巻く環境は変わったけれど、ゆたかなのはどっちなのやら。
そんなことを思った。

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