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November 18, 2006

惚れた!

歌舞伎、二度目の鑑賞をしてきた。

歌舞伎鑑賞の日は突然やってくる。
旦那さんが家にいるスケジュールを確認して観劇に赴くのだけど、ギリギリになるまで予定が立たないのが常なのだ。そんなわけで、今回のように急遽前日にチケットをとったりする。
諦めてしまうこともできるのだけど、今回ばかりはそうもいかない。
海老蔵扮する「弁慶」と菊之助の「富樫」はもちろん、菊之助の「弁天小僧菊之助」はなんとしても見逃せない。

多忙を極めてろくすっぽ寝てもいない中、寝不足赤目を見開いて観劇してきた。

新橋演舞場の花形歌舞伎、「番町皿屋敷」「勧進帳」「弁天娘男女白浪」の三本立て。
新橋演舞場は、歌舞伎座とはまた一味違った雰囲気が楽しめる。
新しいし、お弁当を食べられるスペースや女性用レストルームが充実している。

寝不足の眼も拍子木のリズムに従ってカッと見開いてくるのは、観るのが歌舞伎ゆえか。

番町皿屋敷は、旗本・青山播磨と恋仲の腰元お菊との純愛がゆえの悲劇。
番町皿屋敷といえば江戸三大怪談のひとつ。怖がりの私はおどおどしながら見ていたのだけど、怪談話になる前までで終わってくれたので、普通に恋愛物語として楽しめた。
松緑の播磨はほんと男前で、「本当に一生に一度の恋だから、お前を斬らなくてはならない」という一途さ、それで本望だという芝雀のお菊のこれまたまっすぐさ。
…愛だなぁ。とつい、ほろり。

勧進帳では、海老蔵がやっぱりすごかった。
芝居に舞に見所が多い曲で、菊之助演じる富樫と海老蔵演じる弁慶の修験道をめぐる問答の面白さ、リズムの巧みさと迫力、一段落して杯を受ける弁慶のコミカルな様子など(酒をおかわりして、杯が小さいと盥を所望、がぶのみしたり)、酔って舞うなど、とても面白かった。
あの睨みが、たまらない。

そして、待ってました、菊之助!
いいとこのお嬢様と思いきや揺すりの白浪(盗賊のこと)・弁天小僧。
菊之助を女役男役二度楽しめる、おいしい芝居だ。
豊国の浮世絵から着想を得て河竹黙阿弥が書き上げたというこの作品、テンポも良く台詞も江戸っ子の気風の良さが表れて、小気味良いことこの上ない。
よよよと泣き崩れてたお嬢様が、男と露見した途端にガラリと変わり、「バレたもんはしょうがねぇ」と振り袖を脱ぎに脱いで居直る場面は、ことに痛快。
赤い襦袢から覗く白い肌にどぎまぎするやら、あれよという間に声仕草が男っぽく変わった調子に戸惑いつつも釘付けになるやら。
女装のときのたおやかな様子はどこ吹く風、開き直った弁天小僧は、襦袢を腰まで捲り上げて胡坐をかき、「おぅ、番頭さん、茶をくんな」。
そして続くは、煙草盆でキセルを回しながらの名台詞、「知らざぁ言ってきかせやしょう」。
見所続き、まさに圧巻なのである。
茶目ッ気たっぷりの「弁天」、時間が許すなら二度でも三度でも観たいのだが、そうは問屋がおろさないのが悲しいところ。
黙阿弥が市村羽左衛門(のちの五代目尾上菊五郎)に当てて書いたという芝居、羽左衛門の初演は19歳だったというが、菊之助も19歳で菊之助襲名披露興行を、この演目で行ったという。襲名から10年。
10年前の菊之助こそ知らないが、ますます磨き上げられて洗練されているだろう。

芝居のすごいところ俳優のすごいところは、名優なればこそだとも思うが、
お芝居の、架空の世界を見ていると頭ではわかっていても、
本当にその人物が存在して暮らしていて、
たまたま自分はいまその人の生活の一部を覗き観ているかのような気分になってしまうことだ。
舞台が鎌倉・雪ノ下ということもあり、ついつい弁天小僧を探してしまいそうになる(本気で)。

まだ歌舞伎自体観た数が少ないのだけど、今までで一番面白かったのが、今回の弁天小僧だった。
わかりやすい、というのもあるし、お芝居自体テンポが良く、声色の使い分けやリズム、そういった喜劇芝居の醍醐味がたーんと味わえる。
毎回演目にこれを(もちろん菊之助で)組み込んで欲しいくらい、気に入ってしまった。
歌舞伎を観てみたいけど…というひとには、本当にこの芝居を観て欲しい(なんて、まだ二度目の初心者が言うのもおこがましいのだが)。
惚れた。
(…でも、不思議と、白塗りじゃない菊之助にはあまり魅力を感じない…これこそ歌舞伎の魔力だろう)
もっともっともっと、歌舞伎を、菊之助を観たい!と思う、晩秋なのでした。

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