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October 20, 2006

歌舞伎熱にうかされ。

最初の演目は、安倍晴明の両親の物語。「信太妻」を題材にした「芦屋道満大内鏡 葛の葉」。
安倍保名と所帯を持って6年になる葛の葉(実は保名に命を救われた信太森の白狐)のもとに、本物の葛の葉姫とその両親が訪ねて来、狐葛の葉が歌を残して去っていくというお話し。
葛の葉二人を演じる魁春の早代わりったらすごかった。本当に、あっという間に早がわり。二人の葛の葉を見た、葛の葉の両親と保名のリアクションが普通におかしく、歌舞伎って難しそうと思っていたけど、普通に面白い!と感じました。
童子(つまり子供の頃の晴明)役の男の子がかわいらしく、その子をあやし、いとしいと言いながらも自分は身を引いていく狐葛の葉が涙をそそり、芝居っていいなぁ…と思う頃にはもう幕間。あっという間の楽しい時間なのでした。

幕の内弁当をいただいたあとは、ついに、お目当ての菊之助と海老蔵の曾我兄弟、「寿曾我対面」。
時は頼朝の時代、腹心工藤祐経のもとでの正月祝宴の最中、祐経に親を殺された曾我兄弟が訪ねて来るというもの。
凛として艶のある美しい菊之助の曾我十郎と、足音も荒々しく豪壮な海老蔵の曾我五郎。
典型的な和事と荒事の兄弟対比なのだそうですが、この二人は本当にすごかった。
菊之助はとてもとてもとても美しく、うっとりといつまでも見つめていたいようだったし、海老蔵の睨みがもう、息を飲むほどの迫力!ひと睨みするごとに風がざーっと吹き抜けるような、そんなすごい目力でした。
歌舞伎ライターの方が「役者に睨まれると魔や厄が払われるよう」と書いていましたが、まさにそのとおり。
正直、こんなすごいものだとは思っておらず、本当に感激しました。
ダン!ダン!と足音を轟かせて歩く海老蔵の迫力たるや、さすが江戸期に荒事を創始した市川団十郎家の名跡と感じさせるもので、江戸っ子が荒事に夢中になったのもわかるような気が。なんというか、みていてスカッとするのです。三方を握りつぶしちゃったりするシーンもあり、そこでの盛り上げ方がまたすごい。ぶるぶると怒りにうち震える体と激しい息遣い、見ているこちらも思わず手に汗握ってしまうような、素晴らしい演技でした。
これが海老蔵の力によるものなのか、あるいはこの役柄での型のようなものなのか、歌舞伎初心者の私にはさっぱりわかりませんが、それでもすごいものはすごい。
荒ぶる弟を制止する菊之助の美しい一挙手一投足には、本当に惚れ惚れ。この人の女姿を見るのが夢です。(この日も夜の部では女形で出演しているのですが…)
そうそう、面白かったのは、鎌倉時代の武士の話なのに、役柄によっては台詞が江戸っ子調でした。「祐経どん」とか言っていて面白かった。なんだかフランクですね。

続いてまた鎌倉時代、「一谷嫩軍記」。
なんだか始めての歌舞伎体験、鎌倉にゆかりがあったり、大好きな安倍晴明伝説だったり、どうも私好みの演目続きで嬉しかったです。
義経を団十郎、幸四郎と芝翫が熊谷夫婦を演じ、平家の若武者・平敦盛の首をとったという幸四郎のもとを訪れる敦盛の母・藤の方に魁春。敦盛の首というのは実は身代わりにされた熊谷夫婦の息子・小次郎の首。義経の首実検の場で、それが発覚します。一本の桜の若木に添えられた制札から、義経が敦盛を救う意図を察し、熊谷は実の子を身代わりに仕立てたのでした。ふたりの母たち、そして幸四郎の悲哀の演技が素晴らしかった。実の子を殺してまで主君に忠誠を誓うというのは、聖書のアブラハムとイサクの話でも同じテーマが扱われていて(でもこちらは子は死なず)、不遍のテーマなのかと思わされました。
子と母、というテーマは1本目の演目でも演じられましたが、同じ立場にある私は心打たれ、母の苦しみだったり悲しみだったりが胸に流入してきて、思わずハンカチで目頭を押さえてしまうことも多かったです。
渋~い幸四郎、現代劇での彼を見慣れているでせいか、本業・歌舞伎での幸四郎には少々違和感もあったものの、やはり演技力というのはジャンルを問わないものだとも実感しました。
更には、「寿曾我対面」で工藤祐経を演じていた団十郎がここでは義経を演じ、若々しく美しく、ああ、団十郎ってすごいなぁと思わされました。

最後は清元「お祭り」を演じる仁左衛門。
なんというか、男の色気のある役者さん(役柄なのか?)。
かっこいいなぁ…!

とまあ、とってもとっても素敵な一日でした。
イメージしていたのよりもずっと分かりやすくて、普通に面白くて泣いたり笑ったりでき、人気が衰えないわけもわかるようです。
歌舞伎役者さんというのは存在自体に花があって、その空気を体感できるだけでも清々しい気分になれる。
はるか昔に演劇をやっていたせいか、やはり舞台というのは心ときめく場所で、そのせいか、今度は気の合うお友達と桟敷にあがっちゃおうか?なんて、どんどん気持ちがエスカレート中(笑)。
今回は本当にいいお席で(ビギナーズラックでしょうか)、目の前で海老蔵が私に見得を切っているような。菊之助と何回も目が合ったような。そんな幸せな妄想に浸れました(笑)。これは病みつきになります。

観劇のお話しをしたら、弟が「歌舞伎熱」伝染の模様。
彼は仙台に住んでおり、先日の怪我以来まだ体の調子が戻っていないようですが「海老蔵が観たい!!!」と大興奮中。早く体調を戻して、一緒に歌舞伎を見に行こう、と話しているところです。
弟は私よりずっといろんなことに詳しいですが、趣味の傾向は多少似たところもあるし、ツウといえばカアの仲なので、きっと一緒に観劇したら楽しいだろうなぁ。
母も一生に一度くらい歌舞伎が観たいと言っているので、実家ではしばらく歌舞伎旋風が吹き荒れそうです(笑)。


さて明日からは10日連続で、創作作品を掲載します。
長くなりますが、ご興味ある方はお覗きください。
細切れで読むのが苦手な方は10日後いっきにどどんとどうぞ(?)。
ではまた、10日後に。

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