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September 02, 2006

鎌倉、夜歩き。

060825_19230001鎌倉に暮らしているとはいえ、夜の鎌倉を歩く機会はそうそうない。
暗くなる前に帰ってしまうのが常だし、お店も閉ってしまうから早々に引き上げるのが暗黙の了解のようになっている。
そんな折、ふと、夜の小町通を歩いた。
お茶を飲みながら手紙を書いていたら、暗くなっていただけのことなのだけれど、昼間はもちろん、夕暮れ時の風情とも違う夜の表情が新鮮だった。

この日は以前「骨董屋カフェの休日」でも紹介した気に入っているカフェ、ミルクホールでカフェオレを飲んだ。近頃は骨董コーナーが充実して、以前に比べ着物や和装まわりの小物が増えた。ブームにのっとってのことだろう。
路地裏にひっそりとあるカフェなのだけど、そこから小町通に出るまでの細道に、こんな街燈がついていた。
大正浪漫とかモボ・モガと語られそうなそのたたずまいに、ふと、昔の鎌倉を思った。

皆さんは、鎌倉というと、歴史の授業で習ったイメージや、今現在の古都としての印象が強くおありだろうと思う。
しかしその間の時間、普段語られない鎌倉は、忘れ去られた場所だった。
鎌倉幕府が滅び、政治の中心が再び京都に戻って、そのあとの鎌倉は名目上関東を統括する役所が置かれてはいたけれども歴史の檜舞台はもちろん、おそらく一般の人たちの心からも、忘れ去られていた。
江戸時代に入って訪れたある僧が、あの建長寺でさえ荒れ果てて獣の住処になっていたと書いている。
そこから徐々に人の手が入り、明治頃になると、海水浴が健康によいと推奨されるようになって、鎌倉を訪れる人々が増えたのだという。鉄道も通り、随分と社会は発達した。
それでもまだ鎌倉では、大正10年くらいまでは狐火が普通に見えていたし、講の後手土産片手に変える途中、狸や狐に化かされた話しはいくらでもあった。
ほんの100年前ほどのことである。
おじいちゃんやおばあちゃんが子どもだった頃の話、そう遠くはない昔の話だ。
その頃にもまだ鎌倉には、人ではない存在が暮らせる環境があったのだ。

日中の鎌倉、特に繁華街を歩いていると、人ではない気配のことなどお伽噺の中のことにしか思えない。
だが、逢魔ヶ刻を過ぎて、闇に浸された鎌倉を歩けば、急に事態は真実味を帯びてくる。
闇に紛れて、彼らが活動をしはじめるような――そんな雰囲気が、まだ鎌倉にはある。
たとえ繁華街にでも。

夜歩きをして、といっても店から駅までのものの5分ほどの距離だが、ますます鎌倉が好きになった。
夜の鎌倉は、何もない。
古都とはいえ京都のような花街もない。
でもその空気の中に潜む不可思議な気配が、なんとも言えずにいい。
だが同時に、間違っても夜に名刹の近くには近づけないだろうとも思う。
この濃密な空気の中では、何が出てきても不思議はないだろうと思うからだ。

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