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July 22, 2006

シャボン玉幻想。

はると一緒に、公園でシャボン玉をして遊んだ。
最初は怖がっていたシャボン玉も、随分慣れてきて、最近はやってとせがまれる。
曇り空にそよ吹く風の心地よい日だった。
私は木陰のベンチに座って、シャボン玉液をつけると、ふうと息を吹きかけた。
風に乗ってシャボン玉があちこちに舞い、それをはるが捕まえようと追いかける。
風はもちろん、2歳児の足よりずっとずっと早い。
追いつけないほど差が大きくなると、はるは次なるシャボン玉の群れを求めて私のところにもどってくる。

はるをふりきったシャボン玉は、公園からそとの路地に出かけていく。
中学校の横の路地は、植物園の裏手とあって、生活者だけでなく散歩する人も多い。

公園に3台の自転車が入ってきた。
ピンク、ベージュ、赤。
小学生の女の子達だ。
彼女らは口々に「シャボン玉だ」とささやきあい、私達のいるすぐ隣の大木に足をかけて、木登りを始めた。
樹上からシャボン玉とはるを見下ろして、「シャボン玉なんて久しぶりに見た」なんて言っている子もいる。

「おや、シャボン玉だ」と後ろから声がした。
ベンチの後ろ、公園の外の路地に、散策中のご夫婦がいた。
親世代くらいだろうか。
そのうちご主人の方がシャボン玉の歌を口ずさみ始めると、奥さんが笑い出した。
「なんだよう、笑い出して」と口を尖らして、すぐに「俺らしくないか」と一緒に笑い出す。
そのうち、どちらからともなくふたりは小声でシャボン玉を歌い出すと、遠ざかっていく。

シャボン玉を追いかけるはるが、砂場にはまって泣き出した。
靴の中に砂が入って、嫌だったらしいのだ。
近寄って靴を脱がし、砂を払ってやると彼は笑い出して、すぐにまた、次のシャボン玉を催促する。

そんな様子にさきの小学生達が目を細め、木からつぎつぎに降りると自転車にまたがった。
「シャボン玉、買いに行こうか」「おこずかいで買えるかな」「安いのが売ってるよきっと」
軽く会釈して彼女らが去っっていく後姿に、はるが少しだけバイバイをしていた。

また後ろの方で、シャボン玉という声が聞こえた。
やはり、散策中らしい老夫婦。
ふたりとも帽子を目深にかぶって、ゆっくりゆっくり歩いている。話すのもゆっくりだ。
「ああ、シャボン玉だなぁ。」
かみしめるように言いながら、またゆっくり歩いていく。

儚いシャボン玉に閉じ込められているのは、誰の心にも、優しい思い出なのかもしれない。

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