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July 16, 2006

完璧なパンプキン・パイのこと。

オーブンがいよいよやってきたので、私は是非作ってみたいものがある。
パンプキン・パイ。
私が食べた中で最高に美味しかったパンプキン・パイは、今から二十年ほど前に食べた、母の友人デボラがハロウィンに焼いてくれたものだ。アメリカ滞在の折である。
それは生まれて初めて食べた、記念すべきかぼちゃのパイでもあった。
スパイスがぴしっと効いて、かぼちゃ本来の甘みと砂糖の甘みが絶妙で、この上なく美味しい。
あれからいろんなパイを食べたけれども、今のところ世界一のパイはやっぱり、デボラのパイだ。
スパイスの効き具合が、何とも言えないほど素敵なのだ。

デボラは東洋人で、娘がシェリーといった。
良く笑う、明るくて陽気で元気に満ち満ちているデボラと対照的にシェリーはお人形みたいにもの静かな子だった。デボラとご主人は、サンフランシスコのフィッシャーマンズワーフ界隈で、Shelly's Fish Marketというお魚屋さんを営んでいる。娘の名前をお店の名前にするなんて格好いい、と当時の私は思ったものだった。
ありえないことではあるが、小さなシェリーが(当時4歳か5歳くらいだったように思う)エプロンと白いコック帽のようなものをつけて魚屋の店先に立っているところを想像すると、胸がわくわくするようだった。
今もまだ、あのお店はあるだろうか。
シェリーはもう、デボラ似の美しい女性に成長しているだろうか。

魚屋のおかみさん、と言うに十分な気風を、デボラは持っていた。
しかしながら、彼女の真価はそのお菓子作りの腕前にあり、私達は何度もその恩恵にあずかったものだった。
肝心のパンプキン・パイについても、かぼちゃのパイという食べ物はこういうものなのかと思っていたので、それがいかに素晴らしいパイであったか知る由もなかったし、デボラにその賞賛をあびせることはせずに、ただ「おいしかった!」と伝えたのみだったように思う。

あれから時間を経た今、デボラのパイは完璧な美味だったと、そう思う。
仙台はもちろん、東京やパリで食べた幾多のパンプキン・パイも、デボラのあのパイには到底叶わない。
なんとも素晴らしいパイだったのだ。

というわけで、念願のオーブンがやってきたので、自分で配合を研究しながら、あの「完璧なパンプキン・パイ」を再現しようと目論んでいる。
かぼちゃの美味しくなる季節が、今から心待ちだ。

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