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June 12, 2006

陽の当たる駅で。

060606_15510001江ノ電の駅が好きです。
昔ながら、という感じの、木のホームや駅舎がこころを和ませてくれます。
時間を経た木の風合いというのは、他のどんなものにも勝って、時間を閉じ込めているような気がします。
それは、本来一年ごとに自分を少し膨らませて身の内に年輪を刻むという、木の性質からなのかもしれません。

木でできた駅は、膨らみこそしないけれど、通り過ぎる時間をその隅々に留めているような気がします。
通り過ぎていく、人々、電車、風、陽の光や天からの雨、そんなものをひとつずつ大事に仕舞いこんでいるような。
もし、木に留められた時間を投影する機械があったなら、駅舎の木々は、たくさんのドラマを映し出してくれることでしょう。
その風景の片隅には、今ここに立っている、私と小さな子どもの姿も、留められているかもしれません。

人間に与えられた最大の幸せは、忘却だという人もいます。
どんな出来事も、頭の中では時間が経てば風化し、柔らかいガーゼで包まれたような朧気なものになっていきます。そうして変質した思い出は、人に優しい気がする。
時を経たものというのは、概して寛容なのかもしれません。
それが思い出であれ、木であれ、人であれ。(もちろん何事にも例外はありますが。)

江ノ電の駅をかたちづくる木々は、どんなことを留め、忘却のうちに風化させているのでしょう。
その思い出を投影したら、そこには、柔らかな風景が映っているような、その風景が私たちの心を優しくほのぼのと解きほぐしてくれるような、そんな気がしてならないある日の午後でした。

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