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June 11, 2006

もののけ道の怪。

060504_13270001家の南の方に、わが家で「もののけ道」と呼ばれている、小さな道があります。

車は通れないほどの小さな道は、舗装もされず、昔ながらの砂利道です。

引っ越しの下見のときに、私達は道を間違えてここに差し掛かりました。
この道が他と違う緊張感を持つ道だと、すぐにわかりました。
嫌な感じはしないけれども、なにか、人よりも静かな生き物がじっとこちらを見ているような感じがしました。
夜になればきっと、街灯がぽつぽつと照らすところよりも、深い闇が抱き込む面積の方がはるかに広く、その何者かわからない「彼ら」にとっては、格好の棲家なのだろうと思われました。
悪い存在ではないのだけれど、夏のはじまりの七月なのに、背筋がぞっと凍りつくような時間でした。

その「もののけ道」、今はもう普通に生活道路として使っているのですが、あの視線はやっぱりまだ感じます。
廃屋があるせいなのか、植物園の続きの土地で、木々が荒々しい本性をさらけ出しているせいなのか。
未だに、暗くなってからここを通るのはなるべく避けている私です。

気をつけていたのですが。
先日ついに怪異に遭遇してしまいました。
その日は嵐の次の日で、もののけ道のあたりには見知らぬ鳥達が群れをなして泣き喚いていました。
がなり声のような泣き声はなにかを警告するように聞こえたのですが、なにせ嵐は去ったのですから、私はさほど気にしていなかったのです。
初めて聞く声だな、と思ったくらいで、はると手をつないで、歩いていました。
耳障りな声はずっと響き続けていました。

すると、トン!と音がして、肩になにか落ちてきました。
…鳥の「落し物」です。
物体そのものも嫌なのですが、その時私の頭をよぎったのが、いらぬ知識。ある種のもののけは、こういう目印をつけて、相手の住処に侵入するものらしい、ということ。平安の世なら、呪詛という言葉で呼ばれたこと。
まがまがしい鳥の声が、胸の中の黒い感情をさらに大きくしていきました。
洗い立てのワンピースの肩にできたシミを必死になってウェットティッシュで拭い、公園の水道で洗い流しました。

それきり、そのことは忘れていたのです。
その晩、はるが寝てしまってから、旦那さんとソファでくつろいでいたときのことです。
旦那さんはヘッドフォンをしてゲームをし、私は横でお茶を飲んでいました。
静まり返った部屋の奥で、
トン!
と聞きなれない音がしました。

目の前の和室を見ると、何かが動いているのです。
15センチ定規のような、なにか黒いものがうごめいているのが、テレビが照らす薄明かりの中に見えました。
大きな百足(ムカデ)でした。
黒光りする身体は親指ほどの太さもあり、定規ほどの長さもある、巨大なやつです。
ヘッドフォンをしていた旦那さんは当然聞いていない音なので、彼は狼狽しきった私を見てようやく何が起こったのかを知ったのでした。
旦那さんがしとめてくれましたが、あの音は、上から落ちてきた音でした。
わが家は1階、這う生き物が入ってくるのは仕方ないのですが、それは明らかに上から畳に落ちてきました。
押入れか天井か。それしか考えられません。

なぜ、上から?
その時、私は昼間のことを思い出したのです。

百足は古来、山の神の姿だともいいます。
あのまがまがしい鳥たちは警告を発していたのか、それとも状況を知っていてあざ笑っていたのか。
あの日以来、あの鳥たちを見かけないのも、どこかそら寒い感じがする私なのでした。

もののけ道、慣れたとはいえ、いまだに少し怖いです。

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Comments

う・・背筋がぞっとしました。でもはるくんが大丈夫ならオッケーですよ。霊感強そうで、きっとzokさんを守ってくれるです!

Posted by: えいぜと | June 11, 2006 at 07:57 PM

ほんとに、怖かったです~…いまだに、なんで上から落ちてきたのか理解不能です。
はるも異常を察して泣きながら起きてきましたが、またすぐに寝てしまいました。私は眠れぬ一夜を過ごしました。(…だって、寝ているときに顔の上に落ちてきたら?!と思うと、目を閉じられなかったのです…)
霊感かどうかはわかりませんが、はるは、言われてみるとたしかに強いです。夜中でも震度3~4くらいの地震では起きません。(笑)

Posted by: zok | June 12, 2006 at 10:09 AM

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