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June 24, 2006

美術的、キウイ。

060618_14150001もう十年以上も前のことです。
東京の美大に進学した中学の友人のもとに、時折遊びに行っていました。
昔からひととは違って洗練されていた彼女ですが、美大に入ってからなお一層そのセンスは暮らし全般にまで広がり、凡庸な私としては彼女がずっとずっと大人に見えたものです。
とはいえそれを鼻にかけるでもなく、いつも落ち着いていた彼女は、何も変わっていないかのように、同じ空気の密度で接してくれるのが嬉しくて、何度か押しかけていたのでした。

初めて遊びに入ったとき彼女は、写真を撮り始めたのだと言って、モノクロの素敵な写真を見せてくれました。

その何枚かのうちに、キウイの写真があったのです。
家で食べるキウイといえば、皮を剥いてスライスされた状態しか分かりません。
私は一瞬、それがキウイとは思えず、何か毛の生えたざらざらした皮と、その中に現れるひまわりのような奇妙な形のものを目の前に、少々当惑していました。
しかも切り口はぎざぎざで、まるで卵の殻のよう。

私はこれが何かモダンアートの作品なのだろうと思い、彼女に聞いたのです。
返ってきた答えは、キウイ。
え、でも、こんな形に、どうやったら?と疑問符だらけの私の目の前に、彼女は冷えたキウイを出してきました。
うぶ毛のようなキウイの側面に、スプーンをゆっくり差し込んでいきます。中心くらいまで差し込んだら、一旦抜き出して、その隣にまた同じように差し込む。そうしてぐるりと一周したら、キウイを半分に割るのです。
あの、卵の殻のような形になっていました。
果肉をスプーンで掬って食べるのです。

この食べ方に私はすっかり驚いて、美術をやろうという人は、暮らしの中にも美を探究するものなのだと強く思いました。今や彼女は書店に立ち並ぶ雑誌の一角に名前が見られるほどのデザイナーさんです。
お互いのやりとりも少なくなりましたが、今も、キウイを見るたびに、あのときのことを懐かしく思い出しながら、スプーンをいれるのです。

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