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March 21, 2006

銀の魚とお茶を。

060317_15490001私がそのカフェに入ったのは、偶然以外のなにものでもなかった。
駅からすぐの商店街を抜け、無性にコーヒーが飲みたくなったので、ふと目に留まった店に入ったのだ。
地下に降りていく階段の先には、すりガラスのランプシェードからこぼれるやわらかい光に包まれた、カフェがあった。
店の名はBANANAFISH CAFE。
名前のようにバナナに魚の顔と尾鰭背鰭がついたような奇妙なイラストがこの店のシンボルマークだった。

カウンター席に座ると、壁面の大きな水槽の中から、銀の魚が私を見ていた。
目があった。
そう思っただけなのだろうけど、大きな、10円玉くらいの瞳は確かに私を一瞬見たのだ。

オレンジ色の地肌に、輝くばかりの銀の鱗。
60センチはあるだろう、その大きな魚は、ゆうゆうと水槽の中を行ったり来たりしていた。
水槽の底には黒地に白の水玉模様のエイもいて、たまに笑った顔のように見える腹をこちらに向けて宙返りした。

壁面のふたつの水槽の間にはテレビがついていた。
マスターやアルバイトの女の子たちは、客に気兼ねすることなくおしゃべりしているが、それも自然で嫌味がない。
銀の魚の隣の水槽には、墨黒色のナマズのような魚が、水槽の底の方をやはりゆうゆうと泳いでいる。

カウンターにはマイセンやロイヤルコペンハーゲンの、白地に青の染付け模様のカップがいくつも並んでいる。
主婦もいるし、学生もいる。年配のカップルやお年を召した紳士も、高校生くらいの子も、いろんな年代の客がそれぞれにコーヒーを楽しみ、時折水槽の中に目を向ける。

妙に居心地が良くて、私は、銀の魚を見つめたり、友人に手紙を書いたりして、のんびりとくつろいだ。
カフェオレもなかなか美味しかった。
魚と目があうことはもうなかった。彼は急ぎもせずこちらを気にもせず、ただゆうゆうと泳いでいる。
カフェオレ2杯を飲み干してようやく、腰をあげた。

魚は、アロワナ、というのだそうだ。
なんとなく、またあの魚にあいたい、と思う。

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