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February 03, 2006

きんぎょのおばあちゃん。

今日は節分。小さい頃、家中で豆まきをした後、おばあちゃん達はいっぱい豆が食べられて羨ましかったものです。早く大人になりたいなぁと思う日でもありました。

この日は節分という行事の他、私にとっては大事な一日でもありました。
今は亡き母方のおばあちゃんの誕生日だったのです。
「きんばあちゃん」と私は呼んでいました。
「きん」は名前ではなくて、ニックネームです。私が覚えていないほど小さいとき、おばあちゃんの家に遊びに行った時に金魚の灯篭があったそうなのです。それで「きんぎょのおばあちゃん」が縮まって、きんばあちゃん。
(金魚の灯篭は、私がその由来を知る頃にはもう壊れたとかでなくなっていました)

お誕生日と言ってもまともな贈り物などしたことがないのだけど、お手紙を書いていたのは覚えています。きれいなカードやレターセットを準備して。きんばあちゃんは趣味で日本画を描いていて、きれいな便箋が大好きでした。
いつも丁寧にお返事をくれて、年をとってからは、手が震えて思うように書けないと断りながらも、短くても必ず一筆書いてくれていたのでした。遊びに行くと、これでまた手紙を書いて頂戴ねと、美しいレターセットをいくつもいただいたものでした。
私はきんばあちゃんが大好きでした。

実は、私が生まれて初めて物語を書いたのは、きんばあちゃんの誕生日プレゼントでした。
小学校5年生のときです。
物語を書いて脚本にして、友達数人に手伝ってもらいカセットテープに録音しました。ラジオドラマのようなものを作っていたのです。筋はもう忘れてしまいましたが、ウサギが主人公でした。冒険譚のようなものだったと思います。俳優は全部友人達で、私は監督に専念していました。水がはねる音を表すのに、洗面器いっぱいに水をはって十円玉を落としてみたり、効果音にも凝ったつくりでした。
クライマックスにはきんばあちゃんにちなんで金の魚も登場しました。(でも筋は思い出せません)

きれいなノートに書いた物語と、そのテープをプレゼントする予定でした。
でも結局、それはきんばあちゃんの手元には渡らなかったのです。
少し誕生日に間に合わなかったのだったか、急に気恥かしくなったのだったか、詳しくは覚えていないけれども。
完成したノートとテープはしばらく引き出しの奥に仕舞いこまれていましたが、そのうちどこへ行ったのかわからなくなりました。

あの物語をプレゼントしていたら、きんばあちゃんはなんて言っただろう。どう思っただろう。
近頃、そんなことを思います。
金魚が好きなはるを見たら、親子揃って金魚だと笑うかしら。
あの時から未だに物語を書いていると言ったら、あの柔らかいまなざしで、微笑むのかしら。
ただひとつの物語さえも、きんばあちゃんに見せていないけれども。
12年前、医療機関の不手際で突然に世を去ったきんばあちゃん。
きんばあちゃんに読んでほしかった物語を、私は未だにつむいでいるのかもしれません。

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