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March 17, 2005

ごほうび。

散歩の途中、昔ながらのお菓子屋さんを発見した。
お店の隣のドアがたまたま開いていた。中をのぞくと、どうやら製造工場のよう。といっても、少し広めのキッチン様のところに、お菓子屋さんの名前が書かれた箱が積み重ねられているだけ。ねじりはちまきにTシャツ姿のおじさんが行き来しているのが見えた。

ベビーカーの幅ぎりぎりの、狭い自動ドアを開けると、看板娘がいた。
もっとももう「娘」というには少々はばかるような、母に近い年齢の方だけれども、彼女は入るなり親しげに話しかけてきた。
「今日はあったかいから、お散歩にはいいわよねぇ。あらあらホントに赤ちゃんだわね、1歳にもなっていないくらい?」
初対面とは思えぬほどの気さくな様子で、看板娘(かつての)はいろいろ話しかけてきた。軽い世間話をしながら見るとショーケースには昔ながらの、ノスタルジックなお菓子が並ぶ。
さくら餅、くさ餅、茶まんじゅう、栗もなか…

話は相変わらず続く。
「おすわりはもうできるの?口になんでも入れちゃうから気をつけなきゃダメよ、特にお金は危ないから!1円玉とかね」
話しながらの注文は、思いつく限り頼んでしまう。我が家にお菓子の食べられる人はふたりだというのに、6個も。看板娘のいる商店が流行るわけも、なんとなくわかった気がした。
看板娘は勢いを緩めずに話しつづけ、くるくると慣れた手つきでお菓子を紙にくるんでビニル袋に詰め、おつりと一緒に黒飴を二つ、渡してよこした。
「おつりと、おかあさんに、ごほうびね」

思いがけないごほうびに(何のごほうびかわからないけれど)、気持ちがほんわり緩んだ。
話は、別のお客さんが来るまでずっと続いた。こどもの話になると、尽きない。これから先どういうことに気をつけるべきかなど、ちょっとした育児講座だった。昔はこういう「地域社会」の模範みたいなことが、当たり前の光景として見られたのだろうなぁ…。
黒飴をなめながら家に帰り、くさ餅をひと口。
こくのある餡がさらりと口の中でとけ、わずかにほろ苦い香りがたちのぼる。
ごほうびのせいか、お菓子がますますおいしく感じられる私は、現金すぎるだろうか。

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Comments

ご褒美、もらってよかった。お母さんっていうのは、誰にもご褒美をもらえないんですよ、大抵は。でも、その看板娘さんは、よくそれを知っているいい方ですー。

Posted by: fuji | March 19, 2005 at 02:19 AM

なるほど。
ご自分も「お母さん」だから、きっと新米お母さんにごほうびしてくれたんですね~。
また行ってみよう…

Posted by: zok | March 20, 2005 at 11:23 PM

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